言語発達の臨界期

もう忘れられてしまった感のあるレネバーグ(Lenneberg, 1967)の言語発達の「臨界期」という概念を、新たな装いのもとに修正復活させる勢いがあるのがロックの論文だ(Locke, 1997)。それは、臨界期の位置づけとその開始・終了のメカニズムを説明するとともに、4つの段階にそって、胎児期後期から5歳頃までの言語能力の発達と障害を論じている。そのキーワードは、「社会的認知能力」「語彙の貯蔵蓄積」「分析・計算能力」「メカニズム(やシステム)の活性化」である。

ロック(1997)の論文を読めば、先行する実証研究の情報が得られるだけでなく、間主観性、社会的認知、表象、概念、等の発達を言語発達のベース(起源、土台、原動力)だと考える立場のアイデア・発見と、それとは対照的に、計算(再帰)操作する能力こそが言語能力で、しかもそれはヒトに固有・生得的に与えられていると考える「狭義の言語能力」派(もしくは、ミニマリスト)のアイデア・発見を比較照合したり、つなぎ合わせるのに役立つ重要な「ひらめき」が得られること請け合いだ。

この投稿では、社会的認知等を重視する立場の研究者として、ブルーム(Bloom)、ベイツ(Bates)、トマセロ(Tomasello)などの、1970年代、80年代から言語発達研究をリードしてきた人たちを想定している。また狭義の言語能力派としては、言語発達研究を1960年代以降、一挙に発達心理学研究の表舞台に押し上げる第一原因となったチョムスキー(Chomsky)を想定している。これらの人たちの仕事の紹介は、改めて行う予定です。

■レネバーグ, E. H. (佐藤方哉・神尾昭雄訳)1974  言語の生物学的基礎 大修館書店(Lenneberg, E. H. 1967. Biological Foundations of Language. New York: Wiley.)
■Locke, J. 1997 A theory of neurolinguistic development. Brain and Language, 58, 265–326.

注)文献掲載は、固苦しい論文でないので、一部だけにしてあります。

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